ロミーの怪談日記

路美子(ロミー)と申します。大学在学中。半創半実(半分創作半分実話)の怪談集です。実体験をはじめ、人から聞いた話や身近に起こった話など。

海のお姉さん(後)

おねえさんが作ったという砂のお城は、それは見事なものだった。 外壁は何か固いヘラで整えたかのように滑らかで、所々にホグワーツを彷彿とさせる鋭く尖った屋根が見えている。 「俺はこっちでお山作るから」K兄はせっせと砂をかき集めていく。 「ロミちゃ…

海のお姉さん(前)

私がまだ幼稚園の頃、夏休みの最中田舎にある母方の祖母の家で過ごしていた時に起こった話。その時は、例の親戚のお兄さん(今はともかく当時は本当にお兄さん)であるK兄が東京から遊びに来ていて、昼食後私を連れて近所の海へと連れて行ってくれていた。 …

K神社(後)

かくれんぼの最中、私が神社の奥の茂みの中に隠れていると(元)クラスメイトのMちゃんが「ここ、一緒にいい?」とやって来た。 Mちゃんは同級生の中でもかなり顔が可愛い方の部類に入る女子で、その上勉強もできるらしく春からは私立中学に進むことが決まっ…

K神社(前)

私が中学生の頃、部活の先輩たちや友人と一緒に近場のショッピングモールまで遊びに行ったことがある。住んでいる地域がそもそも田舎のため、休日に遊びに行くところと言えば映画館のある大型のショッピングモールや互いの家くらいしか選択肢が無かったのだ…

門に佇む影

突然の来訪者というのは、たとえそれが人間であろうとそうでなかろうと厄介なものだ。 私の家の外には、ちょっとした門のようなものが玄関から通路を通って階段を降りた先にある。そしてその門はダイニングの窓から様子を窺えるようになっていた。 私が小学…

自殺する霊(後)

後日、私はK兄に電話をかけてみようと思い立った。そうしたら、たまたまタイミングが合ったらしくちょうどK兄から私の携帯に着信があった。 私は結局看護師の正体はなんだったのかと聞くつもりだったのだが、K兄は残りの4つの怪談を私に教えるつもりで電話…

自殺する霊(前)

医者をしている親戚から聞いた話。この人の名前を仮にK兄としておく。 K兄は現在東京の郊外にある総合病院に勤めていて、K兄が医者になった理由というのがまた風変りだった。 何でも、病院の屋上でそよ風に吹かれながら一人のんびりとお弁当を食べたかったの…

不穏なカップル

私が高校一年生の頃、クラスのある男女が付き合い始めた。男子の方はクラス内でも際立って騒がしくうるさいタイプで、対して女子の方は学年でも有数の可愛い女の子の一人だった。 私は特にどちらとも接点が無かったため、カップルの成立そのものに関しては何…

黒い折り鶴(後)

いけないと思いながらも、トムはどうしてもそれを確認しなければいけないような気がして、糸から黒い折り鶴を一羽取り出しました。 そしてこれもいけないと思いつつ、鶴をもとの正方形の状態に戻したのです。 直感といいますか、そもそもがBに対して少しの違…

黒い折り鶴(前)

友人トムといえば、ということで思い出した話があります。 彼は中学時代陸上部に所属していたので、それ絡みのお話になります。たしか本人が後輩の話だと言っていたので、私が二年か三年の頃に起こったことだと思います。 私が通っていた中学校はかなり規模…

行ってはいけない教室③(怪異)

緊迫した雰囲気の二人の肩の間に顔を覗かせて、私は「何かあった?」と訊ねる。 黙ったままの二人を疑問に思いながらも、私はそっと膝から立ち上がり、下から乗り上げるようにして中の様子を覗き込んだ。 二人が何を見たのかはすぐに分かった。 埃っぽい、長…

行ってはいけない教室②(異変)

部活が終わり東棟から出ると、大きな石の柱にもたれかかって理科の問題集を広げるトムの姿があった。立ったまま問題を解く人なんて初めて見たな、と感銘を受けながら、「おまたせ」とりっこ共々駆け寄る。 「俺、半までには学校出る。塾に遅刻するから」 と…

行ってはいけない教室(計画)

私が通っていた中学校には、入ってはいけない……というより、誰もそこに何があるのか知らない、といった不思議な教室があった。その教室は、体育館やクラブハウス(という名の部室棟)に続く渡り廊下に接続する、別館と呼ばれる建物の三階に存在していた。 と…

異世界に行きたいりっこ

りっこは都市伝説だとか、怪談だとか、そういうオカルト的なお話が大好きだ。りっこと私は幼稚園の頃から親交があるが、お互い大学生になった今でもそれは変わらない。たいてい意志の弱い私がりっこに連れられ、心霊体験に巻き込まれたりいわく付きの場所な…

金縛りの家系②

A君は語り始めました。 俺さ、この間卒業旅行に行って来たんだよね。九州なんだけど。九州ってさ、うちの本家?があるところじゃん。だからだと思うんだ、俺がわざわざ近づいたから。 俺、金縛りってそれまでなったこと無くて。友達が面白おかしく話してるの…

金縛りの家系①

「昨日金縛りにあってなあ」と祖父が話し出したのは、私やいとこの家が一同に集まった盆の日の夜だった。また始まった、と従弟のA君が部屋の隅で漫画を広げているのが視界に入ったが、特にすることも無かった私は枝豆の残りをつまみながらひとまず祖父の話を…

異空間への扉

昔父に誘われて、地元のアクティビティ施設に行ったことがある。そこはビルのように高い建物で、冬場は必ず風邪を移されるからと母は絶対に連れて行ってくれなかったのだが、その日は夏休みだった。夏でも風邪はひくのよ、とやや潔癖のきらいがある母は文句…

階段の怪異

私が通っていた小学校の階段にまつわる怪談話を、小学四年生の時に担任の先生から聞いたことを覚えている。 学校の校舎の階段の、二階から三階にかけての踊り場の上部には小窓があるのだが、それが見栄え上設置されたものなのか、一体どういう意味があってそ…

急がば回れ

中学生の頃の話。ただでさえ練習時間が長い吹奏楽部に所属していた私は、少し帰りが遅くなると冬場などは特に真っ暗闇の中自転車を漕いで帰宅せざるを得なかった。 その日も自主練のためいつもより帰りが遅くなり、私は友人のりっこと一緒に暗い夜道を二人並…

ハズレ椅子

大学生にもなると、高校まで使っていた教室のあの木机が無性に恋しくなることがたまに無くもない。中学はともかく、高校は上の学年が教室に置き去りにしていったものを譲り受けるスタイルだったから、三年間のうちで一回ぐらいはぐらぐらぐらつくハズレ椅子…

金次郎と銭

今は歩きスマホを連想させられるといった理由から、二宮金次郎像を設置している小学校も少なくなっているという話を聞く。金次郎像といえば、真夜中に校庭を歩き回っているといった怪談話が有名だが、肝心の金次郎像が無いのではそういった怪談話も次第に消…

可愛いペット

友人はかなりのペット愛好家で、口を開けば家で飼っているペットの話をする。白い毛が綺麗で、家に帰って来ると必ず玄関で出迎えてくれる。長い毛に埋まってしまって外からはあまり目が見えないのだが、目の上の模様がマロのようで可愛い。 何の動物かは友人…

警告

Tさんは毎晩仕事から家に帰ると、空気の入れ替えのためベッドの横の窓を開ける、というのが日々のルーティーンだった。Tさんの部屋はマンションの7階にあり、窓からは少し離れたところに大きなビルと、それに隣接する全く同じ造りのもう一つのビルが見える。…

魅せられる

階段といえばこんな話がある。小学校の時に通っていた英会話教室で知り合った、他校の友人から聞いた話だ。 友人が通っている小学校の階段には、一階から二階にかけての踊り場に全身鏡が設置されていた。たぶん多くの学校の階段の踊り場には、そういった鏡が…

ハイヒールの女

山に纏わる怖い話にありがちなものと言えば、「今さっきすれ違ったばかりの人がまた前方から現れる」というものがあります。一瞬見間違いかな、と思うんです。登山の装備ってだいたい皆似ているし、普通すれ違う人の顔なんてよく見てないですから。 それで、…

河童の存在提示

友人がどこからか持ち帰って来た話。 Hの実家は地方の、栄えも廃れもしない辺鄙な田舎町にあった。家を建てた当初は周囲一辺田んぼや空き地に囲まれていたらしいが、今では他に家も増え、家よりも田んぼの方が希少なほどに立派な住宅地へと変貌していた。 「…

こーちゃん

夏になると、とある親子がうちの近所を散歩しているのを見かける。 初めてその人たちに出会ったのは、私が小学生の頃だった。 私が近所のスーパーでおつかいをして家に帰っていると、向こうから赤ちゃんを抱きかかえたお母さんがゆったりとした足取りで歩い…

試験帰り

私がセンター試験、というか共通テストを受けた日の帰り。 だから今振り返ってもそう昔のことではない。 一日目か二日目かは忘れてしまったが、おそらく一日目の話。 英語の出来があまりに悪く、泣きそうになりながら地元の国立大学を後にしたのを覚えている…