ロミーの怪談日記

路美子(ロミー)と申します。大学在学中。半創半実(半分創作半分実話)の怪談集です。実体験をはじめ、人から聞いた話や身近に起こった話など。

不穏なカップル

私が高校一年生の頃、クラスのある男女が付き合い始めた。男子の方はクラス内でも際立って騒がしくうるさいタイプで、対して女子の方は学年でも有数の可愛い女の子の一人だった。

私は特にどちらとも接点が無かったため、カップルの成立そのものに関しては何とも思っていなかったのだが、この二人、特に男の方が彼女にいつ何時も所かまわず寄って行ってはまさにベタ惚れといった感じで、正直通路は塞がるし話す声は大きいしで迷惑な男だった。

女子の方もまんざらではないと言った感じで、傍から見てもなかなか仲睦まじい二人だったと思う。

そんな中、二年に上るころのクラス替えで二人は別々のクラスになった。男の方は私と同じクラスになり、その頃から男は人が変わったように勉強熱心になった。もともとクラス順位も下から数えた方が早いです、というタイプだったのに、すごい変わりようだった。これは一体どういうわけなのか、彼と塾が同じの友人に話を聞いてみると、その例の彼女と同じ大学に入るために猛勉強を始めたのだそうだ。何とも胸がときめく話だった。

女子の方は入学当初から成績も優秀で、いわゆる才色兼備といった子だったから目指す大学のレベルも高かったのだろう。

教室もお互い廊下の端と端で完全に織姫彦星状態になったものの、男は相変わらず彼女のもとに通い続けた。あまりに足繫く通うものだから、何故か女子の方のあだ名が一時期「小町」になったという。女子の苗字は小野さんだった。

しかしある時、おそらく夏休みが明けたあたりから、男は休み時間も教室にこもって只管勉強に勤しむようになった。変わらず授業中などはうるさいし放課後も友人たちと騒いでいたから特段彼自身に何かがあったというわけでは無いのだが、どういうわけか、あんなに好きで好きでたまらなかった小野さんの存在感がぱたりと消えてしまったのだ。

ああ、もしかして別れたのかな、と勝手な憶測をたてていると、やはり二人は夏休み中にお別れをしていたらしい。あまりに彼氏がしつこいから嫌気がさしたのかなぁ、と思ったのもつかの間、どうも男の方から彼女を振ったという話だった。

これには私も理解できなかったため何人かの友人に事情を聞いて回ったが、誰も詳しい話は知らなかった。それどころか、文化祭が終わった頃に聞いた話によると、どうも女子の方に未練はなく、逆に男の方が未練たらたらだということだった。

自分で振ったにも関わらず変な話である。

そして時は流れ、三年に上がるクラス替えがあった。今度は別れた例のカップルが同じクラスになった。

これを機に案外上手くいっているのでは?と思い、彼らと同じクラスになった友人に状況を訊ねてみた。なんと、不思議なことに男が妙に元彼女のことを気にしていて、毎度の休み時間も自主的に教室を出ていくほど彼女を異常に避けるのだという。反面、やはり女の方は特に何も気にしていないようで、謎は深まるばかりだった。

その後も詳しい過程は知らないものの、私たちは無事に高校を卒業し、二人も別々の大学に進学した。彼女の方は県外の国立大学に進学し、彼の方は全国的にも有名な私立大学に進学した。どちらも申し分ない進路である。

だが、ここで平和に終わらないのが、私が彼らを不穏なカップルと呼ぶ由縁である。どうも、男の方は今の自分の進路に満足が行っていないらしく、それはどうも例の元彼女である小野さんの存在、具体的には、三年で自分と同じクラスに小野さんがいたことが原因なのだと考えているのだそうだ。

私もこの話をしていた友人もさすがに意味が分からなかったが、男はいまだに元彼女に対して迷惑な電話やらラインを繰り返しているらしく、彼女が住むアパートをどこからか割り出しては郵便物の中に不穏な手紙や荷物を紛れ込ませているのだという。しかもその郵便物には、何か人の手を加えて配達されてきた形跡が無いのだそうだ。要するに、男は片道三時間以上もかかる彼女の家に直接荷物を届けに来ているということになるのだ。

しかし、それでもやはり彼女はそれに対しても特に何とも思ってないらしく、今も不穏なものが届くアパートに住み続けているのだという。