ロミーの怪談日記

路美子(ロミー)と申します。大学在学中。半創半実(半分創作半分実話)の怪談集です。実体験をはじめ、人から聞いた話や身近に起こった話など。

金次郎と銭

今は歩きスマホを連想させられるといった理由から、二宮金次郎像を設置している小学校も少なくなっているという話を聞く。金次郎像といえば、真夜中に校庭を歩き回っているといった怪談話が有名だが、肝心の金次郎像が無いのではそういった怪談話も次第に消滅してってしまうということで、早くも少し寂しさを感じている。

そういう私が通っていた小学校にも、玄関口の前に立派な金次郎像があった。結構大きくて、なかなか豪華なのだ。そして、校舎の構造上金次郎の頭のてっぺんは非常用の階段から見下ろせるようになっていた。

私の学校の金次郎像は動かない。ただ、金持ちだった。

金次郎が乗せられている石段には、何故か大量の五円玉がまき散らされていた。いつからあるのか分からないような真っ黒いものから、わりと最近発行されたばかりのような綺麗なものまで様々で、おそらくは代々お調子者の生徒が下から投げ込んだか上の階段から落としたのだろう。

それにしても数が多い。

ただ不思議なのは、その見栄えの悪さからか先生たちが定期的に五円玉を撤去しているというのだが、どういうわけか翌日以降になると元の状態に元通りになっている、というのだ。当然真っ黒な五円玉も元に戻っている。

 

ある日、朝の集会でついに校長先生が怒った。もしかしたら教頭先生だったかもしれない。先生たちは当然元通りにしている犯人は生徒の中にいると疑っているのだが、五円玉を生徒たちが下校した後に取り除いたとして、翌日の朝には既に犯行は行われているのだから、つまり先生たちは子供が夜学校に忍び込んでわざわざ五円玉でイタズラをしているとでも思っているのだろうか。

 

とうとう、金次郎像は巨大な網で覆われることになった。金次郎が捕獲されているみたいだからやめておけばいいのに、と私は思ったが、先生たちも意地だったのだろう。

網は目が細かすぎて上から落としたとしても中には入らないし、下から網をどけようにも子供の手では高すぎてとてもではないが届かない。

これで正体不明のイタズラは収まるはずだった。

しかし先生たちの努力も虚しく、網が付けられた翌日も変わらず五円玉がそこにあった。

投げ込まれた五円玉が網をすり抜けたのか、網の中に五円玉が現れたのかは分からない。

ただ噂では、私が小学校を卒業した今でもその金次郎は大量の五円玉を生み出しているらしく、先生たちがこつこつ貯めた五円玉は最近学校の池の鯉を買うために使われたという話だ。